水漏れ

体当たりのようにふっ飛んで来た先生の体が、すっと、沈んだ。腰の高圧バネをきかせ、「たあっ!」と、白刃をぶんまわしつつ、ぼくの右わきをすり抜けていく。ぼくは、刀の重さに、早くも二の腕がしびれてしまった。呼吸が乱れかけている。二本の真剣のうちどちらか一本がそのうち必ずぼくの体に触れ、肉がぱっくりと骨まで切り裂かれるにちがいない。ぼくは、そう思った。両脚がすくんだまま、動かなくなった。「さあ。もう一度!」悪い夢を見ているような時間がつづいた。これがもしほんとうに夢なら、相手の刀でばっさりと斬られたとたんに、目が覚めるのだが、現実のできごとだから、いつまでもつづいてしまう。「さあ、来なさい!」ひとつ覚えのように、先生は、くりかえす。ぼくに、何度、撃ちこみをさせただろう。水漏れ 寝屋川市が重くかさなっているので、ぼくの腕は、いっそうひどくしびれ、脚がもつれた。乱れに乱れた呼吸で、胸が苦しい。もう駄目です、と刀を芝生にほうり出そうとしたとき、「よろしい。それまで」と、先生は言った。なにが「それまで」だ。気どるな、この野郎、と思いながらも、ほっとして、ぼくは、芝生に両ひざをついた。