トイレつまり

ぼくに歩みより、一本を差し出す。「構えてみたまえ」両手にずしりと重い。「自分の脚を切らないように、しっかりと、持ちたまえ」喋りかたに妙な抑揚があり、それが愛嬌となっている。「こっちへ」と、芝生のまんなかえ、ぼくをつれ出した。ぼくとのあいだにすこし距離をとり、「私を斬るつもりで、構えてみたまえ」と、先生は言った。重い真剣を、ぼくは、ちゃんばらのように構えた。白刃を右手にだらりと下げたまま、トイレつまり 守口市は、ぼくをじっと見る。眼鏡の奥の目を光らせ、しばらく先生はぼくを見つづけた。「よろしい。撃ちこみたまえ」「は?」「ぼくを斬ってよい。斬りなさい」「どうすればいいのですか」「こうだ」先生の両足が芝生を蹴った。白刃が夜の中に一閃した。ガチッ、と音がし、先生がぼくの目の前にきていた。ぼくの構えた真剣に先生の剣がすり合っている。ぼくの頭をふたつに割る寸前で、先生は剣おとめたのだ。「こうだ」さっと、ひと飛びして、先生は、さきほどの位置にさがった。おどろくべき身の軽さだ。「さあ。来たまえ」白刃を握った右腕を、先生は再び、だらりと下げた。ぼくは、構えなおした。重いので、腕がすぐにさがってくる。