トイレつまり

くつろげるようにカラー・テレビが置いてあるし、週刊誌や漫画のつまった書棚もある。和服を着たおとなしいお手伝いのおばさんが、ひっきりなしになにか持ってきてくれる。はじめは、お茶だった。次に果物が出て、それから紅茶とクッキー。その次が、オレンジ・ジュース。そして、コーヒーとトイレつまり 枚方市。ついさっきまたやってきて、「おビールは召しあがりますか?」と、きいてくれた。ぼくは原稿をもらったら、トイレで大至急、社に帰らなくてはいけない。ビールなんて、駄目だ。かれこれ二時間、ぼくはこの略式の応接間にすわっている。ここは、有名な時代小説作家の自宅だ。しっかりした造りの、和水漏れの大邸宅だ。しんとして、とても静かだ。真夜中のせいでもあるのだろうけれど、なんの物音も聞えてこない。いきなり、扉に、ノックの音がした。ぼうっとしていたぼくは、びっくりした。「どうぞ」と、ぼくがこたえると、扉が開いた。お手伝いさんだ。深々と礼をし、「先生は、ご執筆がながびいていらっしゃいます。先生からおうかがいしてこいと言われたのですが、剣道はおできになりますでしょうか」「いいえ。できません」